【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
深い声でなだめられて、くっと息を詰める。
どうするの?と尋ねれば、千瀬はゆっくりわたしの身体を離して、指を絡め合わせた。……言わずもがな、恋人つなぎだ。
「千瀬……?」
「俺に話合わせといて。
……大丈夫。東の敷地に入ったときから、こういうのはある程度想定してたから」
「……うん、」
だいじょうぶだ。
千瀬の言葉を信じて、間違いだったことはない。──幼なじみのわたしだからこそ、確信を持って、言えること。
「──あれ!?
莉胡さんと千瀬さん……!?」
すこし影になったその場所から出て、千瀬と砂浜を歩く。
何もしてないのにものの数秒で見つかったかと思えば、駆け寄ってくる懐かしい面々に、ちょっとだけ月霞を思い出してさみしくなった。
「……ああ、ひさしぶり。
みんなで海来てたんだ?」
「おひさしぶりです……!
まさかこんなところで千瀬さんたちに会えるなんて、」
「……、あの。こんなときにまでこんな話するのはどうかと思うんですけど、もう、月霞には、」
「もどらないよ。
……俺らは追放されたんだから」
「っ、でもあれは、」
「──事故じゃない」
きっぱり言い切った千瀬が、わたしと絡めた手を目線まで持ち上げる。
追うようにそれを見つめた瞳から目をそらして、空いた手でぐっと上着の裾を掴んだ。──知らないことは罪だと言うけれど。知ることは恐怖だと、思う。