【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「ずっと好きだったから。
……あの人から俺が莉胡を奪ったんだよ」
「千瀬、さん……」
「いまはもう、東西関係なく暮らしてるし。
……十色さんに俺らと会ったこと言わないほうがいいよ。あの人たぶん俺のことすごく嫌ってるだろうから、何するかわかんないし」
矛盾する関係をどう言い訳するのかと思えば、口封じ。
嘘なんて到底言ってるようには見えない千瀬のセリフに、みんなはどこか渋い表情を浮かべる。
「月霞の人間でいたいなら、
俺と莉胡には関わらないほうがいい」
「……ミヤケさんが、言ってました。
千瀬さんは絶対に月霞を、十色さんを、裏切るような人じゃないからって」
……相変わらず、ミヤケはミヤケだ。
わたしと千瀬が西にいることを知ってもなお、そうやって言ってるんだとしたら感心する。
……いや、違うか。
ミヤケにとってはきっと、東も西もあんまり関係ないんだと思う。わたしがわたしであって、千瀬が千瀬であること。──彼が求めてるのは、それだけ。
「じゃあ、あのバカに伝言しといてよ。
『例の約束の日に決闘予定だから』って」
「え?あ……はい、」
「ん。……俺らそろそろ行くから。
関わることはもうないだろうけど、ひとまず元気そうでよかった」
ひらり。手を軽く上げた千瀬に手を引かれ、わたしもみんなに「またね」と告げる。
千瀬にとってこの子たちは大事な仲間で、かわいがっていた後輩で。離れるのもきっと、惜しいはず。
「……ごめんね千瀬」
振り返れば、今もまだ、千瀬を慕う彼らの姿。
一歩前を歩く幼なじみに聞こえないよう告げたその言葉は、心から思う謝罪なのか、それとも……