【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
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「まじありえなくね……?
さっきまであんなに晴れてたじゃねーかよ」
ぶつぶつと。
ペンションの窓から外を見てため息を吐くトモに、思わずわたしも「そうね」と苦笑いする。タオルでがしがしと髪を拭った彼は、小さくくしゃみを零した。
──千瀬と、月霞の子たちの元を去ったあと。
結構距離があったから、向こうからは見えてないだろうということで、そのままみんなのところへもどった。……のだが。
全員がパラソルの下で集まったその瞬間に、快晴だった空が雨雲をかき集め、突然の夕立ち。
とにかくペンションに引き上げようということになったのだが、テントやらをそのままにしておけるわけもなく。
「莉胡、由真。
いま一瞬で濡れて冷えただろ。お前ら先にもどって、シャワー浴びとけ」
「え、でも、」
わたしたちも手伝おうとしたら、織春に止められた。
それでも手伝おうとしたのに、「全員一気にもどってもシャワー順番にしか浴びれねえだろ」ともっともなことを言われてしまい。
先にもどってきたわたしと由真ちゃんは、すこしでもはやくお風呂を代わってあげられるようにと、ふたりであっという間にシャワーを済ませた。
……のだけれど、お風呂にはいれるのは、女子でふたりが精一杯なわけで。
男子はどっちにせよ、ひとりずつしか浴びられない。
もちろん冬ほど寒くはないけれど、冷たい雨に長いあいだ打たれていたのだから、身体は冷え切ってるはず。
千咲、羽泉、アルくんとシャワーを浴び終え、いま入ってるのは千瀬だ。
さみーな、とつぶやくトモにもう一枚タオルを渡してから、扉の開く音がしてリビングを通り抜け表側へ。
「織春、最後まで片付け任せちゃってごめんね。
もう千瀬上がってくるみたいだから、次にトモが入れば織春以外全員シャワー浴びたわよ」
「ん、そうか。
このままじゃ店も入れねえしな。コンビニまでも結構距離あるみてえだから、とりあえずやむまで待つか」
シャワーが空いたなら片付けは任せて順番に入れ、と。
織春がほかのみんなを優先して最後まで残ってくれたおかげで、荷物はすべて運び終わった。
もう一度ありがとうとお礼を言ってから手に持っていたタオルを渡せば、ごしごしと拭う彼。
髪からぽたりと、雨の雫が落ちる。……なんというか、水も滴るいい男って、こんな感じよね。