【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-



ぺらぺらと手の内をばらすわたしに、十色が顔をしかめる。

肩に置かれたその手を振り払ってから、にっこりと笑ってみせた。



「あなたに本命の彼女がいること。

……まさかわたしが知らないとでも思ってた?」



「、莉胡」



「わたしの身のためだって言って減らした暴走の回数。──だけどあれは、ばれないためよ。

あなたの特攻服に、彼女さんの名前がもともと刺繍してあったから。糸を抜いて誤魔化してるのを、わたしの目に特攻服が触れる回数を減らしたことで隠蔽しようとした」



いっそわたしの名前でも代わりに刺繍しておけばよかったのに。

……いや、本命がいる限り、わたしの名前を刺繍して世間に公表するわけにはいかないのか。



「ほかにも証拠が必要なら……

あなたにこれをあげるわ、十色」



十色の発言以上に、ざわめきであふれる倉庫内。

わたしが十色に手渡したものは。──夏休みに千瀬パパから受け取った、あの茶封筒。




「その中に、あなたとその彼女さんの写真が山ほど入ってる。

……千瀬のお父さんが、協力してくれたの」



千瀬パパの職業は、探偵。

わたしを溺愛してくれている彼に、千瀬にも知られないよう頼んでおいたら、証拠を大量に集めてくれた。──千瀬パパは、証拠発見率200%という異名を持つ人なのだ。



「ねえ、十色。

まさかわたしがあなたを裏切るなんて、思っていなかったでしょう?」



西の情報を、わたしはもちろん東へ流していた。

だけど東の情報を、同じように西に流した。



1泊2日の旅行に行った夜、織春に話したこと。

それはわたしが、東のスパイであること。──だけど十色を裏切るというこの先の予定と、今日必要になるであろう東の情報を、すべて彼に渡した。



そして彼が、幹部にそれを伝えた。



「──裏切られた気分はどう?」



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