【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
わたしが十色のことを好きだから。
十色は絶対にわたしが裏切らないと思うほどの、信頼をおいてくれていた。──でもそれは、実は間違いではなかった。
1年前。
冬に作戦を決行することになる、半年前。
東西統一すると言った彼に、本当は。
なんの裏切りもなく、協力するつもりだったのだ。
「……本当はね、十色。
わたしはあなただけに協力するつもりで、こうやってあなたを裏切る理由も何もなかったの」
だけど、彼が嘘を突き通せなかった。
わたしと違って作戦を知らなかった千瀬をわざわざ追放するという作戦を立ててまで実行したかった彼の東西統一。
それに、協力できなかったのは。
「あなたの本命の存在に、気づいたの」
──作戦を実行する、わずか数週間前に。
わたしは十色に本命の彼女がいることを知ってしまった。クリスマスにデートする約束をしていたのに、ドタキャンされたから。
──彼女に会わなくちゃいけない理由ができて、
ドタキャンされたことに、気づいたから。
「……でもまあ、さすがにわたしは二股かけられてたからって理由であなたを裏切ろうとは思わない。
この作戦がなかったら、多少揉めて強引に別れるぐらいで済ませたはずなの」
本当なら。
別れれば済むはずだったのに。
「……あなたが、はじめて声をかけてきたとき。
わたしが十色とはじめて会話した時、あなた聞いたわよね? ──『千瀬のことが好き?』って」
……そう。
わたしはあのとき、十色に付き合おうと言われたけれど。その前に、千瀬のことが好きなの?と、確認されたのだ。だから。
「わたしが否定しなかったこと、
ちゃんと覚えてるでしょう?」