【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「……莉胡と千瀬が両思いだって知ってたのに引き離して、もしこれで俺が莉胡に本気になったことを伝えて幸せになったら、千瀬の行き場のなくなった気持ちは?
……はっきり言うけど、ただの罪悪感だよ」
わたしも、十色も。
どうしようもないぐらい、自分勝手だった。
「千瀬への罪悪感があった。
……だけど呑み込まれる自分の感情は、すこしも引かなかった。──むしろもっともっと莉胡を求めて、いつかは狂気になるぐらい好きになる自信があったほどに」
「十色」
「……犯罪まがいなことで莉胡を怖がらせるほど愛してしまったら、今度こそ罪悪感なんて言ってられないぐらい、後にもどれなくなる。
だから、わざと、莉胡と千瀬を追放した」
「………」
「……おかげで狂気になりそうなほど膨れあがってた莉胡への感情は落ち着いたし、いまは純粋に好きだって言えるよ」
何もかもが遅い。
──もう遅かったのよ、十色。
「……もし偽物じゃ、なかったら、」
わたしは間違いなく、あなたを選んでる。
本命の存在がなかったら、十色だけだった。
……でも、ちがうの。
そう言おうとしたわたしの言葉を汲んだように、十色はゆっくりと口を開く。
「莉胡と千瀬を追放した理由は、3つある。
東西統一にあわせて西の詮索をさせるためと、俺の狂気をおさえるため。……もうひとつはね」
十色が、微笑む。
夏なのに春の儚さのような、冬の静けさのような悲しさを孕んだ顔で。──胸の奥が苦しくなるほど、わたしに焦がれてくれた、この人だから。
「……莉胡と千瀬が、
うまくいけばいいって、思ってた」