【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
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「ふふっ。
だから莉胡ちゃん、朝あんなに顔真っ赤だったんだね」
「由真ちゃんちょっと呑気すぎない……?」
始業式を終えて体育館へもどる道すがら。
単位に関係ない日にめずらしく来ていたトモに千瀬が捕まり、わたしは由真ちゃんに捕まったから、色々と話をしていたのだけれど。
「ごめんね莉胡ちゃん。
莉胡ちゃんはたぶん千瀬くんのこと好きなんだろうなってずっと思ってたから……春くんのこと取り戻したいために、千瀬くんと付き合ったりして」
「ううん……
わたしも、由真ちゃんのこと何も知らずに、好きになれてなかった織春と付き合っててごめんね……」
お互いに、すべて知っていた事実をさらけ出した。
由真ちゃんが織春の元カノだったことは本当にびっくりしたけれど、どうやら昨日の織春と千瀬の会話を思い出す限り、きっと織春は、ずっと待っててくれていた彼女の手を、取るんだろう。
織春はなぜか始業式に来ていないから、まだ顔を合わせてないし。
織春からきっと切り出すだろうからと、由真ちゃんにその話はしなかった。
「……あ、春くんだ」
ちゃんとお互いに分かり合えたことにほっと肩をなでおろしていたら、廊下の先に見つけた彼の姿。
その手にはなにか袋があって、ふたりで歩み寄れば織春がわたしにその袋を手渡した。
「どうせこのあとホームルームだけで今日は終わるだろ。サボるから、幹部と、千瀬のこと前行った空き教室に集めといてくれねえか?
その袋は、そのとき使うから開けずに持っててくれ」
「あ、うん……わかった」
「由真。……お前に話がある」
「え、わたし?」
ぱちぱちと目をまたたかせる由真ちゃん。
くすりと笑って「いってらっしゃい」とその背中をそっと押せば、由真ちゃんは可愛らしい笑顔ではにかんで、織春とどこか別の場所へ歩いていく。