【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
千咲は「よかったねー」とわたしに笑顔を向けてくれて、アルくんとトモには散々ニヤニヤされて。
下っ端のみんなの言いたいことを代弁するみたいに「素直に姫になってほしいって言えよ!」と叫んだミヤケが睨まれてたのは言わずもがなである。
どうして怒られるとわかっていて言うのか。
……仲良しなのがわかってるから、いいんだけど。
「みんなもう千瀬が莉胡のことめちゃくちゃ好きなのは、わかってるからさ。
あんなふうにツンデレにならなくても、ね」
千咲と、千瀬とミヤケの話をしたあと。
目が合った十色に手招きされて近づいたら、そんな風に言いながら彼が持っていた月のペンダントを渡された。
「俺が持ってても仕方ないし。
千瀬はつけたがらないだろうから、莉胡にかえしとくよ。……手づくりだって知ってたら受け取らなかったのに」
「……ふふ。
でも、もうなんでもいいわよ。東西のみんなが仲良くなってくれて、しかも千瀬がそばにいてくれるんだから、わたしはしあわせだもの」
「それならよかった。
……俺もさ、色々やり直そうと思って。あの暴走した次の日、学校終わってから彼女に会いに行ってきたんだけど、」
手に持っていたグラスの中の水を飲んで、十色がわたしを見つめる。
そういえば十色とおそろいで黒髪だったんだっけ、と当たり前のことを思い出した。
千瀬のとなりにいる今。
もう意地を張って、髪を染める理由もない。
「……ぜんぶ話したら、莉胡があまりにも可哀想だって激怒されたし、頭悪いの!?ってめちゃくちゃ暴言吐かれたよ。
しかも挙句の果てに反省するまで別れるって言い出すし、女の子って怖いね」
「……うまくいきそうなの?」
「なんとか、ね。
……なんだかんだもう手放せないっていうか。莉胡が本命になったのはほんとだけど、やっぱりあの子がそばにいてくれないと落ち着かなくて」
「……じゃあ6代目を終えちゃう前に、
ちゃんと特攻服に刺繍してあげて」
千瀬から聞いた、初代から続く名前の話を彼にも伝える。
ちあちゃんが初代だってことは十色も知らなかったようでおどろいてたけど、「じゃあ莉胡は千瀬と結婚するんだね」とストレートに言われて、さすがにちょっと恥ずかしかった。