【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「それともなに、
俺のこと妬かせたいって魂胆?」
「そ、うじゃなくて……
わたしはただ、十色とちょっとおしゃべりしてただけなの。深い意味なんて何もないから、」
「そんなの相手はどうかわかんないじゃん。
嘘ついてたらほんとはどんな風に思ってるかなんて、結局本人にしかわかんないわけだし」
「……じゃあ、わたしが。
十色と話してても平気だって思えるぐらい千瀬のことだいすきなのも、言わなきゃわかってくれない?」
振り返って、千瀬をみあげる。
斜めから見上げる千瀬も悔しいけどかっこよくて、その顔がわずかにゆがんだと思うと、ため息と同時に腕を離される。
「莉胡といたら疲れる」
「、」
疲れる、って……なに?
そっけなく放たれた言葉がどう考えてもわたしにとって好意的なものじゃないから、どんどん不安になる。
嫌われた?と違う意味で心臓がはやまる中、
千瀬はわたしの頭に手を置いて、耳にくちびるを寄せた。
「男としての欲求を、俺は結構制御してんの。
……なのに莉胡がそんな反応したら、その制御がどんどん難しくなるからほんとに疲れるんだけど」
「っ、」
「それとも、なに……?
俺に『今日は帰さない』とか、言ってほしいの?」
甘い千瀬の声で言われて、うなずいてもないのに赤くなっていく頬。
十色には彼の声が聞こえていなかったようで、「なに言ったの千瀬」とくすくす笑ってるけど。
き、聞きたくないって言ったら……ちょっと、嘘になるかもしれない。
千瀬にそう言われてもなんの問題もなく受け入れられるよう、はやく大人になりたい。もっともっと、千瀬にわたしのことだけを、独占して欲しいと思ってしまう。