【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
振り返って笑う彼女のくちびるをもう一度ふさいで、抱きしめたままごろんと寝転がる。
器用に俺の腕の中で身体を回転させた莉胡が「お泊まりしていい?」と聞いてくるから、「ん」と返事して莉胡の足を引き寄せた。
俺と莉胡のお泊まりに、深い意味はない。
……いまのところはね。
付き合ってまだ1ヶ月だし、ただ添い寝するだけ。
そこで気づいたのが、どうやら俺は足のあいだに莉胡の足をはさんで寝るのがいちばん落ち着くらしく。
「痛くない?」
「うん、平気」
莉胡は完全に俺の抱き枕常態。
……それも気に入ってるみたいで文句は言わないから、いつもこうやって抱きしめて寝る。
もぞもぞと部屋着のポケットからスマホを取り出した莉胡は「お母さんに泊まるって連絡するね」と一言。
いつも思うけど、俺の家に泊まるのは事後報告でよく怒られないな。さすが幼なじみ。
「ねえ千瀬、今度デートしたい」
「いいけど、どこ行きたいの」
「ちあちゃんの子ども……
すずちゃんだっけ。お誕生日なんでしょ?」
「うん、そうだね」
「プレゼント選びに行くの、付き合って」
……ああ、それでか。
いいよ、と答えてまぶたにキス。くすぐったそうに笑った莉胡とこのあと結局深夜までイチャイチャし続けて、翌日起きるのは昼間なんていうだらしなさ。
でもそれすらしあわせだと思うんだから。
……俺ちょっとしあわせボケしすぎかもしれない。