【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
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「きゃーっ……! えっかわいい……!!
写真で見たことあったけどめちゃくちゃかわいい……!!千秋もちーくんもなんでいままで会わせてくれなかったの!? ああもうかわいい……!!」
「莉胡がおどろいて固まってるんだけど……」
絶対こうなると思ったんだよ、と漏れるのはため息。
先に言おう。俺の義理の姉貴は、極度にかわいいもの好きだ。莉胡はたしかに綺麗な顔をしてるけど、年相応の甘めの顔でもある。
だからつまり、"こうなる"ことは予測していた。
案の定すぐに抱きつかれた莉胡はおどろいて固まってるし、すずを抱っこしてる千秋はくすくす笑ってるだけだし。
「ちーくんっ」
とりあえず助け舟を出そうとしたら、千秋の腕にいるすずが俺を呼んだ。
何度か会ってるから、俺の名前はちゃんと覚えてる。千秋がくすっと笑ってすずを俺の腕に抱かせるから「ひさしぶり」とその髪をなでてたら、ぎゅっと抱きつかれた。
そのすずをあやしながら「莉胡」と声をかけたら、
助かったとでもいうようにほっとした顔をする莉胡。
……だから会わない方がよかったんだって。
「いいなあ、千秋もちーくんも。
こんなにかわいい幼なじみがいるなんて」
ようやく我に返ったらしい姉貴がぽつりとつぶやく。
それに「そ?」と聞けば、うんうんとめちゃくちゃうなずかれた。……そんなにか。
「ふふ、よかったわね千瀬。
姉妹仲も良好なら、莉胡ちゃんも安心でしょ」
「俺1回も莉胡と結婚するなんて言ってないんだけど」
まあするけど。……するけどさ。
でもなんかほら、ちがうじゃん。そうじゃなくてさ。当たり前に思われてるっていいことなんだと思うけど、俺の心持ち的にそうじゃないじゃん。
はあ、とため息をついたら、すずに「およめさん?」と聞かれた。
最近の子どもって言葉が達者すぎて困る。……なんとなくすずの言葉を否定したくない自分がいるけど。