【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「はじめまして、すずちゃん」
ようやく一息つけたのか、俺の腕にいるすずに話しかける莉胡。
まん丸の大きな瞳を莉胡に向けて、「はじめましてっ」と笑顔で返すあたり、莉胡に苦手意識とかそういうものはないらしい。
ひとまず普通に返事してもらえたことに安心したみたいな莉胡に「抱っこ変わる?」と聞いてみたら、うしろから千秋に「誰の子どもかわかんないね」と笑われた。
いや笑うとこじゃないし。じぶんの子どもでしょ。
俺の言葉をちゃんと聞いていたようで、莉胡に抱っこさせようとしたら素直に彼女に手を伸ばしているすず。
莉胡に抱っこしてもらうとうれしそうに頬をほころばせているから、すずはもう莉胡に懐いてるらしい。
「よかったね千瀬。
莉胡が子ども抱っこするとこんな感じだっていう未来の疑似体験だよ」
「言っとくけど俺まだ16だからね」
結婚すらできない年齢だし。
莉胡は早生まれだからまだ15歳だし。
「16……!?
11歳年下なのはわかってたけどやっぱり若い……!」
「そういえば姉貴ってもう四捨五入したら三十路、」
「きゃーっ!! ちーくん余計なこと言わないの!!
あと三十路って言わない!!アラサーって言って!!」
どっちも一緒じゃん……
カタカナ語かそうじゃないかの問題じゃん。
「ちあちゃんって、25で結婚したんだっけ……?」
「そうだよ、俺の方が誕生日遅かったから25になる前だったけどね。
莉胡も千瀬にいつまでに結婚したいか言っときなよ」
「……!?
いや、べつにわたしはそんなわがまま言うつもりないし……千瀬がわたしを選んでくれるだけで十分、よ?」