【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
ちら、と俺を見てくる莉胡。
なんでそこで俺を見るの。アピールしてるのかそれとも俺に止めて欲しいのか。……たぶん後者だろうけど。
「結婚したい年齢とかあんの?」
「へっ……?」
「だから、莉胡の希望はあるの?って」
ぱちぱちと目をまたたかせる莉胡。
それから、んーと……とすこし考え込んでいた。
俺は別にそういうのこだわらないけど、莉胡に希望があるならできるだけ叶えてやりたいし。
でも逆に、"千瀬といられるなら結婚しなくてもいいよ"なんて言われたら普通に落ち込むだろうから、理想を語るぐらいはしてくれても構わない。
わがままと理想を語るのは、また別物だ。
「30までに、とかかな……?
正直まだ付き合ってそんなに経ってないし深く考えてないっていうか……でも、」
莉胡がすっかり懐ききっているすずを抱きしめて、にっこり微笑む。
その姿が、たしかに未来に重なって見えたような気がして。
「結婚するとか、しないとかじゃなくて。
千瀬とすこしずつ、"家族"になっていきたいの」
結婚しないとそれは実現できないけど、と。
つぶやいた莉胡に、ああ、となんとなくわかった気がした。
俺も、たぶんそうなんだと思う。
幼なじみからはじめた俺たちにとっては、きっと結婚するかどうかが大事なわけじゃなくて。家族になるための一歩として、そこに結婚っていう二文字が浮かんでくるから。
「いつか千瀬と、千瀬とわたしの子どもと……
家族でしあわせに暮らせるなら、なんでもいい」
曖昧でもいい加減でもなく。
莉胡なりの、いい意味で"なんでもいい"という言葉。