【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
ハラハラしつつ、ハラハラしつつハラハラしつつ。
言葉を待てば「そうよー」と呑気なママ達。いやちょっと待って……!呑気に答えないで!
「なっ、そんなの無理……
ふたりきり、って、そんなの……」
「だってふたりともまだ若いから、まだまだこれから熱海とか行けるでしょ?
せっかく当てたんだから譲りたくないんだもの」
「それを譲ってってお願いしてるわけじゃないから……!
千瀬とふたりにしないで欲しいの……!」
「いいじゃない。付き合ってるんだし」
付き合ってるから"いい"の意味がわからない。
何もよくない……と頭を抱えるわたしと、「言うならもっとはやくにしてくんない?」と呆れている千瀬。
ものすごく正直に言おう。
付き合ってから、お泊まりは何回かしてきた。それはもちろん千瀬の部屋かわたしの部屋で添い寝するだけのお泊まりだ。
そして、このあいだ。
いつもイブからクリスマスにかけて1泊2日の旅行へ行く七星夫婦。それが例年通り今年も行われると決まってから、わたしは千瀬に誘いを受けた。
「クリスマスイブ、泊まりにおいで」と。
もちろん彼が事前に誘ってきたその理由も、そこにふくまれた意味もちゃんと理解してる。理解してるからこそ、わたしはすごく悩んだわけで。
1週間たっぷり考えさせてもらってから、ようやく「泊まる」という決断をした。
そしてつい数日前に、由真ちゃんに下着から部屋着まで一式新調するショッピングに付き合ってもらったところなのだ。
なのに。 ……なのに!
どうしてタイムリミットを減らすようなことをするんだお母さんたちは……!
「あら。だって莉胡、
千瀬くんになら襲われてもいいでしょ?」
「っ、……!」
とにかく落ち着こうとお茶を飲もうとしたタイミングで、お母さんの爆弾発言にむせるわたし。
千瀬は仕方ないなとでも言いたげにわたしの背中をさすってくれたけど、どう考えても悪いのはお母さんだ。