【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「うん、平気……
びっくりさせちゃってごめん、ね」
「莉胡ちゃんをひとりにさせたら、やっぱりナンパみたいなの、されるんだねー?
ちーくん、彼氏のフリするの慣れてたし……」
「……稀に変な男がいるからね。
俺が不用心だった。ごめん莉胡」
怖かったでしょ、と。
トレーをテーブルに置いて、瞳に不安の色を隠さない莉胡に向かって軽く腕を広げると、莉胡がすんなりその中へおさまる。
「……ミヤケのことは、
あくまでナンパしてきた男ってことにしといて」
「、……うん、」
千咲には気付かれないよう小声で囁いて莉胡の身体を離し、そこからは、何もなかったように振る舞う。
──春に気づかれて「どうした?」と聞かれたけど、変な男にナンパされた、という体(てい)に変更はなし。
「どんな男だったか、調べとくか?」
「……ううん、調べなくていいよ。
莉胡は初対面だって言ってるし、ストーカーとかにならない限りは大丈夫だと思う」
「わかった。……莉胡、不安になったら言えよ?
俺らはいくらでもお前に協力してやるからな」
「ありがと、春」
春が本気で動けばミヤケの正体くらい、ものの数分でわかるんだろう。
この男の情報網は伊達じゃない。──だから俺たちが月霞の元メンバーであったことも、調べれば、すぐにわかるはずで。
「……あの男どっかで見たことある気がするけど」
会話がそのまま終結しようとしていたのに、それに待ったをかけたのは累6代目の副総長。
工藤 羽泉(くどう はすみ)は、記憶をさかのぼるように考えながら、莉胡と視線を絡めた。