【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
何もよくない……!
いや、よくないってことはないっていうか……!
わたしの心の準備はクリスマスイブに向けて行われてたんですよ。
クリスマスイブに千瀬と……っていう思考だったんですよ。高校生だからはやいという不安がなかったわけじゃないし。色々考えた結果がこれだ。
なのにこんなのどうしようもない。
しかも、だ。……しかも。ありえないのは。
「ねえお母さん。千瀬ママ。
今日が一体何曜日か知ってる?」
「ええ、もちろん。金曜よ」
「おかしくない!?
つまり明日から行くのよね!?」
もっとはやくわかってたでしょ!?と。
詰め寄りたくなるほどの勢いで尋ねるわたしを、「まあまあ」となだめてくるママ達。いや、まあまあって流せる問題じゃないから……!
「べつに行ってきたらいいけどさ」
「あら。千瀬くんはこう言ってくれてるわよ?」
「……あんまり莉胡にプレッシャー与えてやんないで。
俺、莉胡に無理させるつもりとかないから」
しれっと。……しれ、っと。
何事もないように言う千瀬に、思わずきゅんときてしまう。こんな風に大事にしてもらえて、うれしくないわけがない。
「莉胡は、莉胡が大丈夫って思えるまで何もがんばらなくていいよ。
……莉胡のこと怖がらせるのに比べたら、俺はそれなりに我慢できるし」
「……千瀬」
たぶんその言葉に嘘はない。
ずっといままで、わたしのしあわせを願って自分を犠牲にしてた人だから。何よりも誰よりも、わたしを優先して、怖い思いはさせないでいてくれる。