【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「ずっと思ってたことひとつだけ聞いてもいい?」
ベッドに腰掛けた千瀬に手を引かれて、ぽんとわたしはベッドに膝をつく形になる。
そのまま腰に腕を回された状態でたずねられて首をかしげたら、千瀬がそっとわたしのふわふわのルームウェアを撫でた。
「十色さんとか……織春とか。
ほら、ないって俺は信じてたくて聞けなかったんだけど……どうなの?」
「え、っと……
十色とか織春と、"そういうこと"した?って聞いてるの……?」
「そう。……なんとも言えない感じだから」
「っ、ないよ。
十色とは高校入ってからって約束だった、から……織春とはそんなに長いこと付き合ってないし……」
なんでこんな恥ずかしいこと言わなきゃいけないんだ。
千瀬は女の子たちと過去に遊んでたりもしたけど、わたしは……
「はじめてじゃ……いや?」
「は……なんでそうなったの」
「だって千瀬経験あるし……」
すこしだけ。
あの頃、千瀬と遊んでもらえる女の子が、羨ましかった。幼なじみ以上の距離感には入り込めなくて、十色には高校生になるまでは、と言われていたわたしにとって、未知の世界で。
「ちがうから。
……経験あるとか落ち込むからやめて」
はあ、とため息をこぼした千瀬。
経験あったら落ち込むものなの……? むしろはじめてよりいいんじゃないの……?
「言っとくけど俺……
それなりに遊んでたから、たしかに経験はあるし。でもそれは本能的な欲を吐き出すためのものなわけ」