【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「……自由人すぎる」
「ふ。……まあ、いいだろ。
どうせお前は千瀬のこと呼び戻したりできないんだろ?怖がってんのわかってんのにひとりにしておけねえよ」
「……ごめんね。ありがと」
「千瀬が帰ってきたら、帰るから」
ぽんぽんと莉胡の頭に手を乗せてそう言うと、莉胡は小さく笑ってうなずく。
「どうぞ」と招き入れられた家の中は、おしゃれなアンティークの小物がところどころに置かれていて、莉胡の母親の趣味なんだとか。
「……昔から、ずっと一緒なんだな」
──リビングの壁に、飾られた写真。
それの一部は莉胡の両親のもの。結婚式だったり、海外旅行の写真。けれどそれ以外のすべてが莉胡のもので、そのほとんどに千瀬もうつってる。
「ふふ、まあ、幼なじみだから。
……千瀬の家にもたくさん貼られてるんだけど、なぜか息子の写真よりわたしの写真の方が多く貼られてるのよ?」
千瀬の父親が、莉胡のこと大好きだって、千瀬が言ってたしな。
……千瀬だけじゃなく、千瀬の家族にとっても、莉胡は特別な存在で。
「やっぱりお前は、ちゃんと愛されてるな」
「……ありがたいことに、ね」
莉胡のことを千瀬が本気で好きなんだとしたら、本当に、入る隙もないんだろうと何度も思った。
誰よりもすぐそばで幼なじみとして見てきた彼女を、取られたくない気持ちは、強く持ってるはずだ。
「……千瀬、どこ行ってるのかしら」
──何気なくこぼされたその一言を、聞いて。
やっぱり千瀬には勝てないなと、ぼんやり思った。