【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「目の前で、ってことは、
男友だちに作ったことはあるんだな」
「うん、まあ……知り合い多いから」
作ったことはあるわよ、と。
話しながらもてきぱきと手際よく料理を進めていく莉胡。なに作るんだ?と尋ねてみたら、「内緒」と一言。
「……春が家にいるって、
いまさらだけど違和感あるわよね」
「まあ、普通なら来ることなかっただろうからな。
……千瀬のおかげで、お前と一緒にいられる時間ができた」
「実はそうやって女の子のことたくさん口説いてきたんでしょ?」
あきらかに信じてなさそうな顔で俺を見てくる莉胡に、思わず口角をあげる。
莉胡だけだ、と告げても、「嘘だ嘘」と言われる始末。それでも、莉胡がちょっと楽しそうにしているから、責めるようなことはない。
「どうしたら、本気だって信じる?」
「さあ……
それは、あなたの想像に任せるわね」
「俺に任せたらキスでもするけどいいのか?」
「それはだめ。
付き合ってない人とキスはしません」
「手強いな」
好きだからこそ触れたくなるし、触れたくなるからこそ好きだと自覚する。
莉胡にも言ったように、過去に彼女がいなかったわけじゃない。それでも、ここまで本能に近い感情になるのは、莉胡が初めてだ。
決して曖昧な感情で付き合ってきた記憶はない、が。
莉胡と比べれば比べるほど、あれは錯覚に近かったようにも感じる。