【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「わたしらしくないって言われるかもしれないけど……
付き合うなら、好きな人とがいいの」
「……わからなくはねえよ」
「もしあなたを本当に好きになれたら、
きっとその時は、間違いなく好きだって伝える」
いつかの、過去を気にするように。
まだ受けられないそれを、そっと静かにふさぐように。
「……俺はただ、お前にそばにいてほしいと思ってる」
「……ねえ、ずるいと、思わない?
わたしが好きになってからしか付き合えないって言ってるのに、それでも付き合ってほしい、なんて、そんなのわたしに逃げ道がないようなものでしょう?」
──触れてしまえばあともどりなんて、出来ないくせに。
たやすく触れたくなってしまうのだから、どうしようもなくて。使い捨てだって構わないなんて、そんな。
「あなたといるのは怖くなるわね。
……わたしが欲しいものをぜんぶ、与えてくれようとするから。縋って、みたくなる」
「縋れよ。
好きなだけ、幻想に溺れればいい」
テーブル越しに、指先だけが触れ合う拙いぬくもり。
駆け引きはどちらも引かないまま。引けないまま。
「……好きだ、莉胡」
「ッ……、やっぱり、ずるい」
莉胡が指先を離そうとしたことに気づいて、それよりもはやく、力を込めて引き止める。
びくっと莉胡の肩が跳ねたことにも気づいていたけれど。──ぜんぶ、わかっていたけれど。
「……何も考えなくていい。
それで俺に縋れるなら、いくらでも、」