【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
ピカッ、と家の中にいてもわかるほど強く外が光った瞬間、考えるよりも先に身体が動いて。
その光に同じように気づいただろう莉胡の姿を、強く抱き締めていた。
「ッ、」
雷特有の音が轟いた瞬間に、莉胡が身体を縮こまらせる。
だいじょうぶだ、と安心させるように囁く声になんとかうなずいて返事はするけど、俺の服を掴んだ手には強く力が入っていて、どれだけ怖がってるのかは一目瞭然。
「っ、はる、」
「わかってる。そばにいるから落ち着け」
怖くないから、と。
ほんのすこし泣きそうになっている莉胡の背中をさすって落ち着かせながら、声をかけ続ける。
その間も、外の雨音と雷は強くなるばかりで。
どう考えてもしばらく止みそうにない嵐の音にため息をつきながら、震える莉胡の名前を呼ぶ。
「莉胡。静かになるまでそばにいる。
……このままでいるから、安心しろ」
「ッ、むかし、家にひとりのときに……
家から遠くないとこに、っ、雷が落ちて……停電して真っ暗になったことがあって、っ……、」
「わかった。もう話さなくていい。
いまは俺がいるだろ?莉胡はひとりじゃねえよ」
「っ、春、」
鳴り続ける雷。
小さなそれがいくつか鳴っている間に莉胡を落ち着かせていたら、また、強く外が光った。
「、っ」
びくっと身を震わせた莉胡の身体をさらに引き寄せたそのとき、あきらかにどこかで雷が落ちた音が響く。
そして。──ぱち、と、電気が消えた。