【完】ファントム・ナイト －白銀ト気高キ王－

また、同じことの、繰り返しで。

大事な仲間を、自ら傷つけてしまうことになる。



──莉胡を好きになるということは。

千瀬に悲しい思いをさせるという事実があること、痛いほどに理解していたはずだったのに。



「ねえ、そんな顔……しないで。

わたしのせいで傷つけるのは、もう懲り懲りなの」



……ああ、そうか。

傷つけることに怯えてるのは、たぶん。



「……わたしのことを好きでいてくれる春も、

春に応える自分も、否定だけはしたくないの」



「ああ。……俺もだよ」



──莉胡も、同じだ。

唯一無二の幼なじみを、自分の手で傷つけてしまうこと。それを誰よりも恐れているのは、莉胡だ。




「春は……春のままでいいの」



それを理解できないほど子どもじゃなくて。

けれど幸せにしてやると言いきれるほど大人でもなくて。やっぱりまだ、曖昧に、さまよってる。



「千瀬には、ちゃんと、言わなくちゃ」



「……そうだな」



「累のみんなにも、ちゃんと。

……もう、後悔なんてしないように」



はじめから、嘘なんてなかったと。

それこそが、紛れもなく嘘なんだと。



知れば傷つくのは、きっと……