【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
04.夢幻泡影
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──わたしが三朝家 十色という人間に出会ったのは、中学1年生の頃だった。
十色の弟である千音(ちおん)くんがわたしたちと同じ中学だったため、千瀬と千音くんが仲良くなり、月霞の存在を知った。
そのうち千瀬は月霞のメンバーとも仲良くなり加入することになるのだが、
そのとき千音くんの「莉胡ちゃんも連れておいでよ」という何気ない一言で、わたしは、あのとんでもなく美形な男と出会うことになる。
「はじめまして、莉胡ちゃん。
千音から話は聞いてるよ。千瀬の幼なじみなんだって?」
「はじめまして。夏川 莉胡です」
「莉胡ちゃんって、名前の響き、かわいいよね。
本当はここね、女の子は入っちゃいけないんだ。だから千音と千瀬のこと叱ろうと思ったけど……ふふ、莉胡ちゃんすごくかわいい女の子だから、俺も許してあげるしかないなぁ」
「っ……」
しれっとそんなことを言いながら頭を撫でてくる彼に、恋愛免疫のないわたしはつい赤くなってしまうわけで。
そんなわたしの反応すらも楽しげに「かわいいね」なんて言ってくるから、タチが悪い。
「ねえ、気になってたんだけど。
莉胡ちゃんってもしかして──」
……はじめて、だった。
いともたやすく、本心を見破られてしまったのは。
「……そう、です」
「ふふ、そっかぁ。
……じゃあ、さ。莉胡ちゃん、」
──俺と付き合ってみる?
甘い声で囁かれるそれに、「え?」と顔を上げる。当時の彼の考えはまだわたしには読めなくて。
……いや、ちがう、いまも読めないのか。
きっとあの人の、考えは。
わたしが何度生死を繰り返そうと、分かり得ないもの。