【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
後ろから抱きしめるのが好きで、キスする時は両手を頬に添えて優しいキスをいつもくれた十色。
その彼がもうそばにいないこと、わかってるけど。
「おはよう、織春」
「ん、はよ。今日は寝坊しなかったのか」
──ふ、と。
笑みを深める彼に「もう」と頬を膨らませるわたしと、「おはよ~」と寄ってきたアルくん。
「なに、なんで呼び方変えてんの~?」
「……ふふ、どうしてだと思う?」
小さく笑って首をかしげると、彼の腕に腕を絡ませる。
まわりの女の子たちからの視線を感じたけれど、報告するよりも早く、アルくんはぱちぱちと瞬きしてから「付き合った?」と聞いてきた。
「うん。色々あって……
いっぱい考えて、付き合うことにした」
「昨日なにがあったんだよ~」
「あ、そう、昨日はごめんね織春。
無事についたって連絡くれたけど、帰ってもらうのすごく心配だったの」
あのあと。
織春はシャワーからもどってきた千瀬と入れ替わるように、「また明日な」と帰ってしまった。
「俺が夜に出歩いたぐらいで心配するようなことはねえよ。
……千瀬にちゃんと、報告できたか?」
そう聞いてくる織春を見て、「そういえば千瀬は?」と首をかしげるアルくん。
……そう。わたしが今日、学校までひとりなのは。
「昨日大雨の中帰ってきてくれて……
すぐにシャワー浴びてもらったけど、やっぱり結構濡れちゃってたみたいで、熱出して寝てるの」