【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-



「っつうことは、今日休みなのか~」



「うん。昨日の夜の時点で既に体調悪そうだったから、さすがにいま報告するのは、と思って……

ごめんね。千瀬にはまだ、言えてないの」



わたしのせいで熱を出してしまったのに、無理やり話を聞いてもらおうとは思わない。

朝いつもの時間に来るはずの千瀬が来なくて向かいのお宅にお邪魔したら、出てきたのは昨日お母さんと出かけていたおばさんで。



「ごめんね、高熱出してていま寝てるのよ。

会っていってくれてもいいけど、」



「……ううん。放課後また来るね。

千瀬の好きなりんご、買ってくるから」



「ふふ、ありがとう。

放課後にはマシになってると思うわ」



千瀬がいままで熱を出したときは、大抵その日の夕方には熱がおさまっていた。

元からあまり体調を崩さない人だから、熱を出した時にはぐったりしてるけど、放課後にはそれもマシになる。




「ちーくんお休みなんだねー。

いつも莉胡ちゃんといっしょだから、いないと違和感あるー」



「そうだね。

莉胡ちゃんの騎士って感じなのに」



「でもよ、春と付き合ったんなら、

もう騎士って距離感じゃなくねー?」



千咲や羽泉の言葉に、やっぱりいないと違和感を感じるのはわたしだけじゃないのか、と思っていたら。

頭の上に乗っかった腕。ひさびさに聞いた声の主。



「わー、さとちん……!

ひさびさだねー!?来たの!?」



「おー、おひさー。

そろそろ期末だろー?試験受けねえとマジで単位落とされるから仕方なくな」



亜川 智弥(あせん ともや)。

千咲がさとちん、と呼んでいるのは、智という文字が"さとし"とも読めるからで。──彼が、累の5人目の幹部だ。



< 45 / 232 >

この作品をシェア

pagetop