【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
……は?と。
漏れた声は、決して上の人間に向けるようなものじゃない。はっとして謝ろうとしたけど、彼はそんなの気にしてないとでもいうように、笑ってみせた。
「冗談だよ。追放したのは俺。
……でもさ、面白くないでしょ?莉胡が西の人間と仲良くしてるなんてさ。俺だけじゃなくて下の奴らだって、たぶん面白くないよ?」
たしかに、それはそうだ。
俺らはまだ、莉胡たちがこっちにもどってくるって、信じてる。だって十色さんの隣には、莉胡しか似合わない。──だから。
「もし莉胡が西側の人間になったことがばれたら……
たとえ俺が指揮をとらなくても、全面戦争になるよ?」
「……それは」
「莉胡が西側の人間になってたら、きっと泣くんだろうね。
元チームメイトたちと、いまのチームメイトが、自分のせいで争うことになるなんて」
「十色さん……」
莉胡のためにも俺らのためにも、全面戦争はしたくない。
莉胡がいて、千瀬がいて。──十色さんの隣でしあわせそうに笑ってる莉胡が俺らにとっての姫だと誇れるあの頃が、なによりも平和な日々だった。
「……十色さんは、まだ、
莉胡のことが、好きなんですか?」
「さあ、どう見える?」
「好きだから、莉胡を取り戻したいように見えます」
「へえ、なら、そうかもね。
……だけど物語は、案外とっくにはじまってたりするんだよ?」
「………」
「あの子は俺に復讐なんて出来ないし。
そうだなあ。……ミヤケには教えてもいいけど、千瀬が親友っていうのが信頼できないんだよね」