【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
だから教えられないなあ、と。
のんきにつぶやいたその人は、バイブレーションで鳴り出したスマホを、相手を確認することなく耳に当てる。
「そろそろかけてくると思ってた。
……やっぱり乃詠に作らせただけあって、アレ、すごく音良かったんだよね。雑音も入ってなかったよ」
『───』
「なんだ、そんなこと心配してたの。
……いや。最近、"鴉(からす)"っていう情報屋が俺らのこと嗅ぎ回ってるらしい。だから接触は避けたい」
相手はたぶん、傘下の総長とかだろう。
右手でスマホを手にしている彼は左手で、月のペンダントに触れる。──莉胡とおそろいの、ペンダント。
「りょーかい。期待してるよ」
にこりと笑みを浮かべて電話を終わらせた十色さんは、ペンダントトップを自分の目線まで持ち上げた。
その表情が示すのは、果たして……
「腕の良い情報屋よりも、
うちの幹部の方がよっぽど腕利きだよね」
「はあ……まあ、そうですね」
「いや……
うちのお姫様には適わないか」
するりとペンダントのチェーンに絡む、細い指。
勘違いでもなんでもなく、この人は莉胡の話をするとき、とても楽しげに話す。──恋人だったときと、変わることなく。
「どうせ昨日、莉胡たちと接触したあと……
お前、千瀬と会ってたでしょ?」
「、」
「べつに会うな、とは言わないけどさ。
次から会うときは、西の情報ひとつぐらいもらってきてよ?」