【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「……俺は別に、全面戦争でもいいけどね」
「、」
「あまりにも退屈過ぎる」
「十色さん、」
「さあ、仕事だ仕事。
なんせ俺は東のトップだからねえ。忙しいんだよ。……ま、どうでもいいような案件ばっかりだから退屈なんだけどさ、」
組んだ脚をほどいて、ソファの背に沈めていた身体を起こし、パソコンの電源をつける。
その動きひとつでさえ流れるような美しさに見えるほど、この人の言動は色香が薫る。
──莉胡のこと、やっぱり。
そう言いかけたけれどどうせはぐらかされることはわかっていたから、口を閉ざした。
「失礼します、総長」
「ん? なに、乃詠」
「……累が、姫をつくる、と」
「へえ。……で、その女は?」
「……夏川 莉胡」
「ふーん?
……まあ、そうだと思ってたけど」
楽しみだねえ、と。
口にしたこの人の考えは、やっぱり。まだ俺には、到底読めそうもない。