【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
【Side Crow】
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ヴー、と、電子機器ならではの音を多数発するこの部屋。
それを掻き消すようにスマホから流れるロックバンドのミュージック。暗い部屋でモニターにうつるのは、ついさっきハッキングした道路のカメラ。
「……んなの、運良くうつってるわけねーだろうが」
防犯カメラの映像は、全部が全部残ってるわけじゃない。
ある程度の期間だけ記録すればまた新しく切り替わるようになっているから、ハッキングして見られるのは、その期間内のものだけだ。
……だから、まあ。
「普通に考えてうつってねーんだよな……」
一体何を考えて、"東のヤツらが前に暴走したときの映像を探し出してくれ"なんて頼んできたんだ依頼主。
それ見てなにをどうするっつーんだよ、というのは、ただその映像が見つかりにくいが故の八つ当たり。
でもまあどうせ。
良い結果は出てこねーだろうよ。
あいつが何を知りてーのかは興味ねえけど、場合によれば最悪の結果も考えられる。
その上であいつが何をしたいのかなんて、それこそ俺の知ったこっちゃないわけで。
「──鴉、」
「おー。お前の欲しい情報はそう簡単に出てこねーよ。
俺みたいな腕の良い情報屋でもな」
「……それでもお前に頼るしかないだろ」
「まあ、西の人間が東の情報探ってるって外の人間にばらされたら全面戦争起こるからな」
あーあー、初代も厄介な関係を作ってくれたもんだよ。
もっとわかりやすく敵対してるとかだったら、あっさり潰してハイ解決、なのにな。
「なあ、春。
……お前、莉胡を、姫にするんだろ?」