【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
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さっきは言いすぎた。ごめん。
そう言った千瀬はそれ以上わたしを無理やり帰らせようとすることはなくて、熱が上がりそうにもないから、と一緒にテスト勉強をしてくれた。
「千瀬、おとなしく寝てるー?
……って、あら。いらっしゃい莉胡ちゃん」
勉強してるの?と、わたしのノートをのぞきこんだおばさん。
それから隣の千瀬に視線をやって、「寝てないの?」と問いかけた。
「薬で熱下がったし、寝るほどだるくないし。
……軽く勉強して莉胡と話してるだけだから」
「そう?ならいいけど……
あ、莉胡ちゃんが今日もお見舞い来てくれてるかも、と思ってさっきケーキ買ってきたのよ。下で準備してるから、あとで下りてきてね」
「うんっ、おばさんありがと」
笑顔でお礼を言うと、おばさんはリビングへと下りていく。
ベッドにもたれるようにして床に座っていた千瀬は、「莉胡」とわたしの名前を呼んだ。
「なぁに?千瀬」
「……近いうちに、東と西が揉めるかもしれない」
「え?」
「十色さんが……
下に指示出して、西を攻撃したって」
それを聞いて、思わず黙り込む。
どうして月霞の人間でも累の人間でもない千瀬がそんなことを知っているのかなんて、答えはひとつしかなくて。
「……ミヤケから聞いたの?」
──千瀬の、大事な親友。
彼なら千瀬に対して情報を渡しかねない。誰よりも千瀬やわたしを信じてくれる大事な仲間の名前を出せば、千瀬は無言でうなずいた。