【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
ミヤケがまだ、千瀬やわたしたちを信じてくれているように。
千瀬はずっと、ミヤケのことを信じてる。
ずっとずっと、わかっていたことだ。
「西に来れば……
千瀬はもう東にはもどれないのよ?あなたの親友は、東の人間なの」
「……わかってるよ。
でも自分で、西に行くって決めた」
「……千瀬」
「莉胡のこと悲しませたくないんだよ。
だから……わかって」
いつだってそうだ。
わがままなのは自分の方だ、なんて千瀬は言うけれど。彼はいつも、わたしを優先しようとする。──それがまるで、義務みたいに。
「……なら、何も、言わない」
「うん、それでよし。
……先にケーキ食べに行く?」
「勉強しなきゃ。
……でもケーキ食べたいから、行こう?」
「食べ物に関してはものすごい素直だよね」
もしわたしと千瀬が、幼なじみじゃなかったら。
きっと千瀬はこんなふうにわたしを優先したりはしないだろう。義務みたいに、守ってはくれない。
それは罪悪感を感じるわたしにとって、とてもありがたいことで、うれしいことで。
だけど彼のいちばんではないことにも、いまのような距離感にいられないこともたまらなく悲しいだなんて、そんなの、自分勝手だ。
……ああ、もう、お願いだから。
いまの幸せを崩そうとしないでよ、過去のわたし。