【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
──ケーキをご馳走になったわたしは、そのあとしばらく千瀬とおしゃべりした。
それから家にもどれば、いつの間に来ていたのか、『千瀬はどうだ?』と気遣う織春からのメッセージ。
『連絡遅くなってごめんね。
熱が上がる様子もないし、大丈夫そう』
そう返信して、ベッドにごろんと横になる。
その拍子に何気なく、スクバのポケットの中にある電話番号を思い出した。
「……、」
千瀬は、最後まで意志を曲げなかった。
わたしと一緒に、西に来る。──それなら。
『連絡寄越さねーかと思ってたよ』
「名乗ってもないのに、
よくわたしだってわかったわね……」
わたしが、手を回してしまうだけだ。
ミヤケは「お前だろーなって気がした」と、聞き方を変えれば想い人に告げるような言葉を発したあと、「それで?」と聞いてくる。──鋭いのは千瀬と同じだ。
「……千瀬が、西に、来るって」
『だろうな。
お前西のトップの女になったんだって?』
「……どこ情報、それ」
『さーな。
俺らの総長は訳わかんねえレベルで情報持ってるし』
俺らの総長、ということは、ミヤケにそれを教えたのは十色だ。
相変わらずね、と思わず苦笑して、「ねえ、ミヤケ」と、名前を呼ぶ。
せつなさを、孕んでいるのは。
悲しくなるのは。……わたしから、手を離すから?