【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
『お前と十色さんのめんどくせえ価値観で東西対立してたまるか。……って、ちょ、十色さ、』
『ひさしぶりだね?莉胡』
──甘い甘い、電話越しの声。
調子がいいなと思いながらも「ひさしぶり」と短く答えるわたしに、十色の満足そうな吐息。細やかに空気を揺らすそれは、半年経っても変わらない。
『なに、拗ねちゃってるの?
まったくもう……困ったおひめさまだ』
「思ってもないこと口にして口説こうとするのはあなたの胡散臭い恋愛の手口よね。
言っとくけどわたしは引っかからないから」
『俺のこと好きなくせに?』
しれ、っと。
当たり前のようにそう言ってくる十色に、電話越しじゃなかったら、手当り次第何かを投げつけているところだ。
「モテるからって自意識過剰過ぎない?」
『俺はいつだって彼女に一途だよ?』
「残念だけど、わたしは彼女じゃないから」
ひどいなあと責める口調とは裏腹に、甘ったるくて余裕な雰囲気を醸す十色。
本当に一体、この男はわたしのことをなんだと思ってるんだろう。──手放して、おきながら。
『まあ、そっちでのんびり待ってなよ。
ああ、なんだっけ、千瀬のこと気にして連絡してきたんだっけ?』
「……それが、なに」
『俺の計画が終わればもう、千瀬に用はないし……
そうだなあ。千瀬のことも、仕方なく東で引き取ってあげるよ』