【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「一途なわたしなんて……
はじめから存在しなかったのよ」
『ふーん?
……ああ、ミヤケ。悪いけどさ、ちょっとだけ席外してくんない?』
もしわたしが、本当に一途だったのなら。
誰も見えないくらいまっすぐに、彼だけを想えていたなら。──あのとき。
『莉胡ってさあ……
俺のこと、大っ嫌いだよね』
さっきは俺のこと好きなくせに?なんて言っていたのに。
あっさりと手のひらを返すように事実を告げられて、くちびるを噛む。見えていないはずの自分を見透かされているような気分になるから、居心地が悪い。
『大っ嫌いなくせに、よく俺のこと今も好きだって言ってられるね。
……俺、本気で西からお前のこと取り返す気だけど』
むかつく。
そうやっていつだってわたしだけを見ているような素振りで。わたしを想うような声で。
『西から取り返せたら俺の勝ちだね』
「東をつぶせたら……わたしの勝ちよ」
『はは、それ本気で言ってる?
俺が東のトップに立っている以上、東は絶対に潰せないよ。──だって莉胡は、俺のこと好きだから』
好きだと言ったり大嫌いだと言ったり、また好きだと言ったり。
はたから見れば矛盾しかしていないその考えもすべて理解した上で、「そうね」と冷ややかに答えるだけ。
「わたしはただ、
あなたに奪われたものを取り返すだけよ」
『奪ったなんて人聞きが悪いな。
取り返したってどうにもならないようなものなのに』
「ッ、そんなことわかってるわよ……!
だけどそうしなきゃ気がすまないのっ!わたしからあなたが奪ったものは、それくらい大切で大きいものだったのよ……!」