【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
……だめ、だ。
十色相手にムキになっては、言い負かされてるのとおなじこと。冷静にならなくてはと思うのに、口は彼へ怒りでも悲しみでもないそれを、ぶつけるだけ。
「っ、どうして……、
どうして、十色なの、っ」
『……莉胡は自分を正当化するのが好きだね』
「っ、どうしてわたしにとっては十色で、
十色にとってわたしじゃなきゃだめだったの……っ」
──付き合ってしまったからこそ、こじれてどうしようもなくなってる。
もしあのとき付き合わなかったら、こんなに千切れそうな感情に悩まされることなんてなかったはずなのに。
「っ、もう……お願いだから……」
付き合わなかったら、こんなにも、好きだとか嫌いだとか、言わなくて済んだはずなのに。
──仲良しなままで、いられたのに。
「これ以上……踏み込まないで……」
『……莉胡』
「あなたを好きになったこと……
っ、これ以上、後悔させないでよ……っ」
十色もわたしも、変わってしまった。
お互いに結局好きになんてなりきれなくて、あきらめきれなくて、無駄な抵抗として足掻いただけで。
『……俺は後悔してないよ』
穏やかな声に、泣きたくなった。
電話越しで、良かったと思う。──こんなに行き場のない感情に悩まされるような顔、誰にも見せたくない。
それが十色でも、千瀬でも。