【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-



発言が女の子らしいな。

莉胡なら絶対に……って。幼なじみに依存しすぎてるのは、結局俺も同じか。



「春だって甘やかしてくれたでしょ」



「うーん……ほら、春くんって。

なんだかんだみんなに優しいから、あんまり特別な扱いをされてるって気分にはならないかな」



「それって俺が冷たいみたいな言い方だね」



「ち、ちがうよ。そうじゃなくて。

千瀬くん、女の子は莉胡ちゃんだけに特別優しいって、みんな言ってるんだもん」



特別優しい。

それはたしかに間違いではないけど。莉胡以外の女と特別関わることもなかったから、という理由でもある。



それに。

俺が遊べば莉胡が嫌がるし、正直、彼女という存在は面倒だったから作らなかった。ただでさえ俺に特別わがままな幼なじみがいるっていうのに、これ以上面倒事を増やしたくないし。




「なんで、莉胡ちゃんは千瀬くんと付き合わないんだろうって、みんな言ってたよ。

累のみんなとも仲良くて、春くんに好かれてて……千瀬くんにも大事にされてる莉胡ちゃんのことが、正直うらやましかったの」



「……あれは莉胡の人柄でしょ」



ただただ一途に。

盲目的に、誰かを想ってるから。まわりの気持ちには靡く気配もなくて、まっすぐで。



「そうだ。

……ミヤケとその彼女と仲良くするのは自由だけど。俺、西側の人間になるから。……ミヤケのこと、裏切るつもりでいるってことだけ、言っとく」



「……わたしは東も西も関係ないよ。

春くんのことが好きで、いまは千瀬くんの彼女ってだけだもん」



「……そっか。ならいいけど」



──太陽の熱が、気温が、夏を知らせる。

唐突に思い出すそれに、あれからまだ半年なのかと、やるせない思いがずしりとのしかかった。



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