【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「ふふ。
千瀬くんと話してると、大体莉胡ちゃんの話につながっちゃうよね」
「……そう?」
そんなに莉胡の話してるかな、と由真とした会話を思い返せば、たしかに莉胡の話を頻繁にしている気がする。
無意識ってタチ悪いな、と我ながらため息をこぼしていたら、「千瀬!」と名前を呼ばれた。
聞き慣れたその声に「おはよう」とのんきに返せば、彼女は「おはよう!……じゃなくて!」とひとりでツッコミ。
その隣には春の姿があって、どうやら一緒に来たらしい。
「なんでひとりで行っちゃったの!?
……って、言おうと思って本当は来たんだけど、」
「……うん」
「すぐに理由わかったから、もういいわよ。
昨日電話かかってきたときに、なんとなく察してたし。……先行ってるね」
ひらり。
手を振った莉胡は、春と連れ立って先に歩いて行ってしまう。どうやらこの状況については、何も言うことはないらしい。
俺に彼女ができたところで。
莉胡の反応が”こう”であることは、とっくに予想済みだったくせに。──なにを今更、気にしてるんだか。
「気にしてる?」
「……まさか」
「ふふっ、わたしと千瀬くんは好きで付き合ってるわけじゃないんだよ?
だから、莉胡ちゃんのこと気にしてくれていいんだからね」
どこか見透かすような瞳でそう言う由真。
小動物らしい様子とは裏腹に、ちゃんと芯を持ってる子なんだろう。春とふたたび、というその考えに悪意のひとつも見えないから、俺は協力することにした。
無理やりにでも春と別れさせるような女だったら、絶対に手を組みたいとは思わない。
そもそも、莉胡と俺が付き合う理由もなければ俺に得もないはずなのに、どうして俺はこんなことに協力してるんだか。