私のご主人様Ⅱ
…とりあえず部屋の片付けだけでもしよう。
使った客間に入ったとき、鼻をかすめた薔薇の香りに自然と視線が薔薇に向く。
そういえば、白い薔薇を気にされてたっけ…。確か名前は琴音。名前が似てたから何となく覚えていた。
わざわざ来てくださったのに、このままでいいのかな。あの薔薇、もう処分されてしまうんだよね。
…それなら。今入ったばかりの客間を飛び出し、包装紙を手にすると庭にやって来た。
時間がないっ!白い薔薇の前に膝をつき、何本か花を切ったところで茎にあるトゲに青ざめた。
しまった。トゲの処理…。ええいっ!!
『っ!!!ったぁ』
痛い…。涙目になりながら何とか処理して、包装紙で包んで花束の出来上がり!ちょっと雑なのは見逃して!
片付けは後にして正面玄関を目指して走る。
間に合うかな!?お庭から正面に出られる小さな門から出ると、丁度黒い車に乗り込むお客様の姿が見えた。
や、ヤバイッ!!
『あ、あの!この子たちよろしければ連れていってあげてくださいっ!』
とっさに出た言葉は思いのほか大きな声になって、車に乗り込もうとした同い年くらいの男の子の動きを止める。