私のご主人様Ⅱ
『季龍、受け取りなさい』
不意に響いた声に我に返る。車内から聞こえてきた声は初老の男性のもので、視線が合うと微笑みを向けられる。
『ありがとう、手を傷つけてまで用意してくれたんだね』
『っ…い、いえ』
み、見られてた。トゲを取るのに素手でやったから手は傷だらけ。
少しだけ恥ずかしくなったけど、伸びてきた手に顔を上げると、同い年くらいの男の子と視線が合う。
ドキリと跳ねた心臓と、高揚する頬。とっさに視線を外すけど、静まらない。
な、なんで?ドキドキする心臓に気を取られ、視線を合わせることが出来ないまま、何とか花束を差し出す。
受け取られ、花束が男の子の手に渡る。
『…名前は』
『っ…こ、琴音っていいます』
さっき思い出した薔薇の名を口にする。ぽんと頭に乗った重みに恐る恐る顔を上げると男の子と視線が重なった。