私のご主人様Ⅱ
結局あの後メイド長と旦那様にそれはそれは怒られて、嫌な記憶と共に封印していた。
でも、あのとき、お父さんにヤクザだと教えられても全然怖くなかった。また会えるかななんて、思うくらいに気にしなかった。
それがなんでだったのかは自分でも分からない。でも、思い出した今でも、季龍さんたちを怖いと思うことはなかった。
「琴音ちゃん、入るよ?って、こら。早く寝る」
ノックの後に開いた襖。スウェット姿の奏多さんに、ポカッと頭を叩かれる。
奏多さんはヤクザ。暁くんも、伸洋さんも。森末さんたちも。ここにいる人たちはみんな、ヤクザ。
分かってる。でも、怖いとは到底思えないんだ。
「ほら、寝れないの?手繋ぐ?」
「コクッ」
布団を引いてくれた奏多さんが差し出してくれた手を掴んで、布団に潜り込むと目を閉じる。
季龍さん、覚えてないんだよね。思い出してくれるかな。
そんなことを思いながらも、遠くなっていく意識に気持ちよくなって、温かい夢を見た気がした。