私のご主人様Ⅱ
「出せ」
「若、ここちゃんのそれ、何」
季龍さんの言葉に逆らう伸洋さんの表情は真剣で、その冷たい瞳に背筋が凍りついた。
頬はジクジクとした痛みが続いているけれど、ほっといても何とかなるんじゃないかと思ってる。
多分?まぁ、治るでしょ!
と、特に気にしていない私より、伸洋さんの方がずっと深刻な顔をする。
「…殴った」
「は?若が?」
「…」
重い沈黙が落ちる。って、殴ったって季龍さんは不可抗力なのに!
慌てて誤解を解こうとタブレットを手にするけど、その手を押さえられ、かばんから出せない。
振り返ると、季龍さんの顔がいつも以上に近いところにあって固まった。
「琴音」
「っ!!」
呼ばれた直後、背と後頭部に手を回され、抱き寄せられる。
って、だ、抱き締められてる…?
カッと火照る頬はたぶん真っ赤だ。頭が回らなくて硬直する。