私のご主人様Ⅱ
「傷を残させたくない。お前は自分を犠牲にしようとするな」
犠牲…?
そんなこと言われたことがなくて、理解ができない。
私がしたことは、自分を犠牲にしてるってことなの…?
目を手で覆われ、なにも見えなくなる。これじゃあ、登校初日と同じだ。
肩に触れる温もりが、頭を撫でてくれる手が、くすぐったくて、恥ずかしくて、心臓がドキドキと音を立てる。
「琴音、寝てろ」
いつもよりずっと優しい声音。
季龍さんがおかしい。なんでそんなに優しくするの?なんで、そんなに気にしてくれるの?
分からない。私は使用人で、季龍さんはご主人様。ご主人様は偉くて、その人の言うことに逆らうことなんて許されない。
なのに、どうしてそんなに後悔しているの?
寝たくなくても、視界を塞がれるとどうしても眠たくなる。
結局、眠気に逆らえず眠ってしまった。