私のご主人様Ⅱ

季龍said

身を固くしていた琴音の緊張が解ける。目を覆っていた手を外すと、気持ち良さそうな顔で眠っている琴音の顔が見える。

いつもなら穏やかに見える表情が、頬の怪我のせいで痛々しい。

怪我をさせてしまった頬に指を滑らせると、琴音の表情に険が走ったのを見てすぐに指を離した。

「…」

分からねぇ。なんであの時頭に血がのぼったのか。

どうしてこんなにも琴音を傷つけたことを悔いているのか。

「…若、ここちゃん誰か庇った?」

「…」

伸洋の声に我に返る。飄々としてるくせに、核心だけは外さねぇ。ある意味厄介なな奴だ。

視線を向けると、ミラー越しに視線が合う。

「へぇ、若が手出すなんて珍しいじゃん。そいつ、どんなやつ?」

「…ただのクラスメイトだ」

「何?ケンカでも売られた?…それとも、ここちゃんをとられそうになったとか?」

取られる…。

琴音を連れていかれそうになったとき、咄嗟にその手をつかんで止めた。
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