私のご主人様Ⅱ

裏口から入ると、すぐ診察室のような場所がある。

そこにあるベッドに琴音を寝かしつけ、顔にかかった髪を払う。

よほど疲れていたのか、琴音が起きる気配はない。それをいいことにその寝顔を眺めていた。

「いきなり何よ。来るときは連絡してって言ってるのに!」

バンッと音を立てて唐突に現れた女に不覚にも肩が跳ねる。

入ってきたドアの反対側にあるドアから現れたのは白衣を着た女。

ヤクザ相手にも臆すどころか真正面から向かってくる。まだ若いくせに妙に気が強い奴だ。

「まーま、そんな怒らないでよ秋奈ちゃん♪」

「馴れ馴れしく呼ぶなって言ってるでしょ!」

伸洋が茶化すように名を呼ぶなり噛みつく医者は、ベッドに目を向けるとその目を丸くさせる。
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