私のご主人様Ⅱ
隠された傷
カリカリカリ…ゴシゴシ、カリカリカリ…
鉛筆を走らせる音がやたら部屋に響く。
あれから屋敷に戻って来ると、出迎えてくれた人たち全員に心配されてしまった。
特に奏多さんと暁くんに心配されて、休んでろとご飯を作るのはとにかく、片付けは台所から追い出されるという実力行使をされた。
そんなわけで、部屋に戻ってテスト勉強です。目指せ満点だもんね。とか言いながら課題を片付けるのが優先だ。
それにしても…。さっきの季龍さんは何だったんだろう。抱き締められるし、ずっと抱っこされてたし…。
ダメだ。恥ずかしくて死にそうです。
頭をブンブン横に振って目の前に広げたワークに集中する。
鉛筆を走らせる音がまた部屋を包んだ。
「ことねぇ?」
「?」
声をかけられて顔を上げると、襖から顔を覗かせる梨々香ちゃんがいる。その顔は少し暗くて、寂しそうだ。
首をかしげると、入っていい?と遠慮がちに聞かれ、頷くと静かに入ってきて抱きついてきた。
とりあえず鉛筆を置いて、梨々香ちゃんを抱き締め返して頭をポンポンと撫でる。