私のご主人様Ⅱ
「ことねぇいなくなっちゃやだぁ…」
「…」
タブレットが遠くて手が届かない。安心させてあげたいのに、それができない。
…でも、届かないことを安心してしまう自分がいる。
いなくならないでという約束を私は守れない。
いつか、必ず私はお父さんや成夜たちのところに帰るから。ずっと、ここにいることは出来ないから。
だから、ここにいるという約束をしないことに安心してしまっていた。
梨々香ちゃんの頭を撫でていると、ふと私の服を掴む梨々香ちゃんの手に赤いものが見えた。それは手首にあるリストバンドにもついてしまっている。
…待って。梨々香ちゃん、リストバンドなんかしてたっけ…?
背筋に嫌な汗が伝う。…まさか。梨々香ちゃんの手首にそっと手を伸ばし、リストバンドに触れる。
すると、今の今までしがみついてきていたはずの梨々香ちゃんが、一瞬で離れ、両手を背に隠してしまう。
その顔は緊張で固くなっていて、視線を合わせようとしてくれない。