私のご主人様Ⅱ
「もうっ!どきなさいって言ってんでしょ!!」
「若の命令です。従えません」
「~っ石頭!ハゲ!!!」
「っな!?ハゲは瀬名ですっ!俺はふさふさっすよ!!」
悪口なんだか、低レベルな言い争いなんだか、賑やかな声に暁くんと顔を見合わせる。
廊下の角を曲がると、こちらに背を向ける相須さんと、その相須さんに向かい合っている梨々香ちゃんの姿が見えた。
梨々香ちゃんは、怒りと悲しみが入り交じった顔で、相須さんを鋭く見つめていた。
「ことねぇはとにかく、私は組の娘よ!なんで私まで聞いちゃダメなのよ!」
梨々香ちゃんの言葉に、はっとする。
梨々香ちゃんは、守られることを望んでない。その言葉には覚悟がある。裏社会で生きていくと言う覚悟が。
その覚悟を認めてもらえない辛さを、悲しみを背負っていた。
「季龍さんの意思です。琴音さんと一緒にいてください」
「私はお兄ちゃんに守ってくれなんて言ってない!!!」
「お嬢」
足を止めてしまっていた私の隣を通って前へ進む暁くんは、こちらに視線を向けた梨々香ちゃんにまっすぐ向かっていく。