私のご主人様Ⅱ
「季龍、お前は古いことしやがって…」
「親父!?」
「組長!!?」
道具が片付けられたとほぼ同時に、開け放たれた襖。
もちろん驚いて振り返る組員たちの目に飛び込んだのは呆れ顔をした組長、永塚源之助の姿だ。
突然の組長の登場に組員たちは頭を下げて出迎える。
季龍は1人、表情を歪め源之助を見上げる。
「エンコ切ってどうすんだ。そんなもん、差し出されなくても監視つけときゃいい話だろうが」
「ですが…」
「ならなんだ?琴葉ちゃんのエンコを切らせるつもりか?」
「ッ!?琴音にそれはさせねぇ!あいつには奏多と暁をつけて…」
「なら、そいつにも同じことさせりゃあいい話だ。男でも、女でも関係ねぇだろ。家族の体をみすみす傷つけんじゃねぇよ」
「…」
源之助の言葉に季龍はそれ以上の反論を失う。
仮にも裏社会の一端を担う組の、組長のものとは思えない発言だ。だが、永塚源之助という人間ならそれを簡単に言う。
極道でありながら、極道に染まり切らぬその芯の強さが求心力となり、彼の元に人が集う。
そうして出来たのが永塚組なのだから。