私のご主人様Ⅱ
「♪」
海なんて久しぶりもいいところだ。ましてや自分が海に入るなんて小学生以来だ。
浜辺方ではビーチバレーが始まって、梨々香ちゃんもはしゃいで遊んでいる。
そんな声もどこか遠くて、ただ聞こえてくる波の音に耳を傾け、時々浜辺に向かってチャプチャプと音を立てながら進む。
「…」
永塚組に買われて3ヶ月が過ぎてる。こんなに馴染んでいる私を見たら、成夜怒るんだろうな。
なんで逃げないんだ、なんで助けを求めないんだって。
助けを求めればすぐに助けてくれるような場所がこんなにも近くにあるのに、不思議とチャンスだ、逃げようと思わない。
それが諦めなのか、なんなのか分からない。
ただ、この人たちを騙して逃げようという気にはなれなかった。