私のご主人様Ⅱ
静かな時間が過ぎていく。
お互いに口を開くことはないまま、ただ私がページをめくる音と季龍さんが資料をめくり、キーボードを打つ音だけが響く。
夏の蒸し暑さも、クーラーが効いた室内ではそのむさ苦しさも煩わしさもない。
チラッと季龍さんに視線を向ける。ちょうどコーヒーを手に取った季龍さんは、ブラックのままそれを口にする。
へぇ、苦いの大丈夫なんだ。今度からガムシロたちはいらないかな。
と、なぜかコップを持ったまま固まる季龍さん。…え?もしかして、コーヒー苦手?それとも不味かったのかな。
背中に嫌な汗が流れる。ど、どうしよう。やっぱりちゃんと聞いておけば良かったかもしれない…。
1人でそわそわしていると、季龍さんはコーヒーをもうひと口飲んで、仕事の手を再開させる。
よ、よかったのかな。
何事もなかったように動く季龍さんに、そわそわしていた気持ちが落ち着いていく。